NPO法人周南いのちを考える会 会報 2007年1月30日発行 第23号より

   内藤いづみ先生のご講演をお聴きして
      
                       布山 聡子


 2007年、新しい年がスタートしました!
今年、生まれてはじめて(36年目にして!)「初日の出」をみました。息子たちとともに懐中電灯を片手に自宅を出発し、息切れしながらやっとの思いで山頂へたどりつきました。すでに、大勢の人たちが「初日の出スポット」に集まっていました。汗がひき、寒さを感じはじめた頃、「ワァーッ」という歓声と拍手、薄暗い空に一点の光「初日」があらわれました。家族の健康を祈り、記念撮影をしました。その後は感慨にふける間もなく、人々に紛れ雪崩のように下山しました。あっという間の出来事でしたが、一年のはじめに清々しい気持ちを味わうことができました。(その後、ひどい筋肉痛に悩まされましたが・・・)
 
 昨年は、多くの人たちとの出会いとあたたかい気持ちに、感謝、感謝の一年でした。また、多くの先生方の講演に、毎回貴重な勉強をさせていただいています。そのなかで、今回は、昨年10月28日に行われた内藤いづみ先生の講演、「あなたが一番いたい場所〜『ありがとう』と『さようなら』がひとつになる場所〜」についての感想を書かせていただきます。

 内藤先生の講演会から、3ヶ月が過ぎようとしていますが、今でもあのときの感動がよみがえってきます。あざやかなピンクのジャケットで壇上に現れた内藤先生は、私の想像よりも(ごめんなさい!)お若くて、とても笑顔がステキな先生でした。ユーモアのある話しぶりにすぐに引き込まれてしまいました。ご自身のホスピスとの出会い、患者さんとの出会い、ホスピス医療、そして別れ、写真をみながら話してくださいました。
印象的だったのは、写真のなかの患者さんや家族が、とてもいい表情をしていらっしゃるということです。苦しみに耐えながらの笑顔ではなく、家族写真のような自然な笑顔、これが内藤先生の医療なんだなぁと思いました。講演のなかで先生は、「生きていてよかったなぁと思える医療をしたい」といわれました。また、「人生の最期にはいつもの生活を繰り返す」といわれましたが、少しでも長くいつもの生活が続けられるようなお手伝い、それがホスピス医療なんだと思いました。それが実現したとき、死にゆく人々は、「ありがとう」そして「さよなら」がいえるのです。また、このようにして愛する人を看取ることができたなら、残された家族も前を向いて歩いていけるのではないかと思います。このようなことを、自信を持って言ってくださり、実行してくださる先生だから、患者さんや家族は信頼、安心できるのだと思います。私も、「あー、内藤先生が近くにいてくれたらなぁ」なんて思ってしまいました。講演中は、泣いたり笑ったり、あっという間に時間が過ぎてしまい、すっかり「内藤いづみファン」になってしまいました。

 後日、先生の著書、「あなたが、いてくれる」と「あなたを家で看取りたい」を拝読し、講演会とあわせて、先生の思いや信念を感じ、またまた目頭があつくなってしまいました。いつもいのちの現場にありながら、決してその状況に慣れない、「最期までひとりの人間として尊重する」謙虚な姿勢をもちつづけること、これがホスピスや緩和ケアの基本だと思いました。
私は、結婚する前までは看護師として総合病院に勤務していました。患者さんや家族の心に近づきたいという思いはあっても、検査、手術、処置、急変・・心よりも体に目がいきがちで、心に寄り添う看護が満足にできていなかったように思います。技術や知識を身につける研修にたくさん行っても、心を学ぶことが後回しになっていたような気がします。患者さんが退院されるとき、「ありがとう」と言ってくださっても、患者さんにとって満足できる看護だっただろうか?と釈然としない気持ちがありました。
病院には病院、ホスピスにはホスピスの役割があると思いますが、そこに共通するのは、「ひとりの人間として尊重する謙虚な姿勢」だと思います。著書のなかに、「臓器ではなく相手の人生に向かい合うためには、気力、体力と不断の学びが求められます。その努力が、私たちに足りないことを反省します。」とありました。この姿勢こそが、内藤先生の医療のすばらしさだと感じました。
また、子をもつ親としての姿勢にも学ぶべきところが多くありました。教育にも力を注がれており、共感することも多くありました。今、教育現場で起こっているさまざまな出来事も、いのちと向き合うという点では、ホスピスや緩和ケアと目指すものは同じだと思います。死を学ぶ機会がなくなった教育に、警鐘を鳴らし続けておられることを、とても力強く感じました。

 読み終えてみて、重いテーマにもかかわらず、とても爽快な気分になりました。人はいつか死を迎えます。いつか迎える最期のときが豊かなものになるように、日々の思いを大切に、丁寧に生きていこうとあらためて思いました。
 そして最後に、いつか山梨県側からの富士山をみてみたいと思います!
 今年一年、みなさまにとってすばらしい一年となりますように!!