2010年10月25日発行 第33号より
秋の夕暮れに
前川 育
 子どもの頃のことです。下校後、また小学校のグラウンドに行って遊ぶのが日課でした。帰ると母に内緒で、そっと「じいちゃん、お小遣い」と手を出して、私の掌には、10円玉が数枚。

山あいの村には、お寺・神社・村の診療所・駐在所・森林組合・農協・バスの停留所・魚屋さん・小間物屋さん・駄菓子屋さん・八百屋さん・お米屋さん・ガス屋さん・そして小学校。

駄菓子屋さんに走って行き、当たり付きのガムや貝に入った黒砂糖のお菓子を買って、小学校へ。

 ブランコに乗ったり、鉄棒で逆上がりをしたり、みんなで縄跳びをしたりして時間を気にせず遊んだ昭和の時代。

 ブランコを大きくこぐと、空を飛ぶようないい気持ち。ほどほどの揺れの時に、ピョーンと飛び降ります。次の人が、またブランコを大きくこぎ、ピョーンと飛び降りる、この繰り返しが楽しいのです。立ちこぎもスリル満点。

 ある日、ピョーンと飛び降りた瞬間、ビリっという音が・・・・・・・・。

買ってもらったばかりのスカートが、金具にひっかかり破れてしまいました。

「あ〜!ショック」母の怒った顔が浮かびます。そのうち、また遊びに夢中になり、今度は縄跳び。長い縄で、「い〜ち〜、に〜、さ〜ん、し〜、ご〜」と数えながら、何人まで入れるか競うのです。これも、結構スリル満点。

放課後の校庭は、楽しい思い出ばかりです。

 ふと気付くと、あたりは薄暗い!「秋の日はつるべ落とし」とはよく言ったものですね。家に着く頃には、あたりは真っ暗・・・・・・・・・。

 遊びに夢中になり、帰るのが遅くなってしまいました。我が家の灯りを見てドキドキでした。「遅い!」と叱られたのか優しく「お帰り」と言われたのか、記憶は遥か彼方です。

 秋の夕暮れに、そんな懐かしい情景を思い出しました。

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NPO法人 周南いのちを考える会