会報記事 2012年1月17日発行 第36号

8回ホスピスケア講座が終わりました


                           

   講座を全回(5回)、参加された方は、35名でした。

8
「妻を看取る日」 垣添忠生さん (日本対がん協会会長)

 

 日本のがん医療のトップに立たれている垣添先生は、奥さまを肺がん(小細胞がん)で亡くされました。78歳でした。「自分はがん治療医であるのに、妻をがんで逝かせた」という後悔の念と共に、お元気な頃のことなどを話されました。

夫婦喧嘩をしたことがないという仲の良さ。お二人でカヌーを漕ぐ姿や、風景のスライドを見ながら、がん闘病・喪失感の講演をお聴きしました。

 

今回のご講演は日曜日でした。その理由が、講座の当日判明!

土曜日に、1週間分の食事の下準備、お掃除などをきちんとしてから日曜日に講演。生きる姿勢が、まっすぐな垣添先生には、これからも「日本のがん医療」の向上に頑張っていただきたいと心から願っています。

    

9
「山谷のホスピスで」 〜絶望から希望へ〜 山本雅基さん

                 (きぼうのいえ理事長)

 東京、山谷のドヤ街にある「きぼうのいえ」

昨年の春、山谷へ行き、「きぼうのいえ」を見学させていただきました。身寄りのない人に、愛をもってケアする施設です。

 道を歩いているホームレスらしき人に、「きぼうのいえはどこにありますか?」と聞くと、一緒に案内していただきました。ごく普通の光景です。

 屋上にある小さな礼拝堂でお話を伺いました。礼拝堂に飾られた亡くなった方々の写真は、皆さん笑顔。入所した時は、みんな気難しい顔だそうです。

この写真を見て、講演の依頼を決心。

 とかく利己主義になりがちな世の中です。しかし、「身寄りのない方への愛にあふれた施設とその生活を紹介したい」との気持ちが強まりました。

 当日、山本さんは穏やかな口調で講演をされましたが、ちょっとハプニングがあり、実はヒヤヒヤドキドキの、この日の講座でした(これ以上は?????です)。大変なお仕事をされているのですから、ストレスもあるのでしょう。

これからも、どうか力尽きないで、頑張っていただきますように・・・・・。

10
「病気になって困った!」 〜患者相談の現場から〜 高砂真明さん

                 (山大附属病院MSW)

 MSW(医療ソーシャルワーカー)は、「病気に伴って起こる様々な問題に対して、社会福祉の立場から患者さんの相談を受け、解決への手助けを行うのが仕事です。

1.☆高額医療費(保険の種類や収入、年齢によって1ヶ月に支払う医療費の

自己負担限度額が決まっている。

☆その額を超えた医療費は約3カ月後に返してもらえる。

2.入院中の医療費は、あらかじめ「限度額認定証」を準備しておけば、上限額

  まで、支払えば良い。

  つまり、「病気になって困った!」時には、病院内のMSWに相談するのが、早道です。(高額医療費など複雑です)

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☆ゲストとして、アフラック山口支社長さんにお越しいただき、医療福祉とは違った目線からのお話を伺いました。

医療費に関しては、高額医療費で何とかなります。しかし、仕事を休むようになったり、長期療養や生活費のことを考えると、備えあれば憂いなし。「がん保険」も視野に入れることも大切ではないかというお話を伺いました。

がんになってからでは、「がん保険」に入れない、そのことを「がん」になってから初めて知った」と耳にすることがあります。

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 「緩和のこころ」   松岡順治さん(岡山大学大学院緩和医療学教授)

 

 以前、がん治療学会で講演をお聴きし、是非、山口の皆さんにも聴いていただきたいとの熱い思いでご講演をお願いしました。

 1.緩和医療について

 ・二人に一人ががんになる時代に、がんのことを全く知らない人が多い

 ・身近で死を見守った人がないので、死とはどういうものかわからない人が多い

 ・がんになってもよりよく自分らしく生きることは、私たちの権利であり理想である。

 2.がん生存学/サバイバーシップについて

 ・がん治療において、仕事を失う・金銭的に困窮する・人間関係を失う・生き甲斐を失う

 3.野の花プロジェクトのビジョン

 ・岡山県における緩和医療展開のための教育と実践のための組織作り

 ・がん患者・家族・がんサーバイバーを組織化し、患者さんの視点から緩和医療情報を社会と医療従事者に向けて発信する

・岡山県において緩和医療の啓蒙と普及活動が自律的、組織的に行われる風土が形成される

 4.痛みを取ることの重要性

 ・自分らしく人生を全うするには、すべての痛みからの解放が必要

 ・そのためにも身体的痛みは一番にとることが大切

 5.生きるということ、大切なこと

   ・人間的関係性の強化

   ・関心を示すこと

   ・患者さんを専門職・地域が輪になって支える

最後に、「緩和医療は皆さんの希望を支えます」とおっしゃいました。

「どこでも、だれでも、緩和医療を受けることが出来る日が速く来ますように」と心から願っています。

 

12月 
「一粒の種」を聴いて 〜みんなで語りましょう〜

                 歌手 砂川恵理歌さん

 

「一粒の種」作詩は看護師高橋尚子さん(川崎市在住)。末期がんの中島正人さん(当時46)は、神奈川県内の病院に入院。中島さんは再発したがんが全身に転移、延命治療は望んでいなかったそうです。高齢の両親を気遣い、お見舞いを断って、ひとりで闘病。20041月、担当の高橋さんが見回りのため病室に入ると、「死にたくない。一粒の種でいいから生きていたいよ」と絞り出すような声で訴え、大粒の涙をぼろぼろこぼされたそうです。

そんな背景で作られた「一粒の種」を聴き、いのちについて、みんなで考えた最終回でした。 ♪♪とても、きれいな澄み切った歌声に、会場もうっとり♪♪

「一粒の種」、それは、亡くなった人を想う歌、そして希望の歌だと思います。

                  

 

「一粒の種」

       作曲:下地勇 作詞:中島正人/高橋尚子/下地勇

一粒の種に 一粒の種に

ちっちゃくていいから 私もう一度 一粒の種になるよ

出会って 語って 笑って 泣いた

生きててよかったよ   あなたのそばでよかったよ


一粒の種は風に飛ばされ    どっかへ行ってしまうけれど

あなたへと辿る確かな道を   少しずつ舞い戻って

丘の上からあなたにだけ見える  闇にも負けない光を放とう

ささやかな日々に愛をもらった  私にはそれができる


一粒の種に 一粒の種に
ちっちゃくていいけど   あなたにだけ 気づいてもらえる種になる

痩せた頬に もう涙を流さないで  震える声で もう語りかけないで
私は笑顔であなたを見ている    私を愛するあなたを見ている

心配ばかりかけてごめんね 淋しい思いさせてごめんね
そろそろあなたを 次の場所で喜ばせてあげるから

一粒の種に 一粒の種に
ちっちゃくていいから  命の種に 必ずなるから
すぐそばにいるから