2012年3月29日発行 第37号より




          後悔は、前を向いて進むきっかけに
                              前川 育

 後悔、それは30数年前に57歳で亡くなった父のことです。
同じ時期に、長男が白血病で入院中でしたので、父の病気について深く考える心の余裕がありませんでした。
 夏休みに帰省した際に、「いつもの父とは違う元気の無さ」を感じました。気のせいだと思っていたところ、9月に松山赤十字病院へ緊急入院。その1週間前までは、「身体を鍛える」と通勤途中でバスを降り、ジョギングをしながら勤務先へ通っていたほどの豪放磊落な父でした。
 腹水がたまっていると聞き、「肝硬変ですか?」と病院の公衆電話から主治医に聞きましたが、言葉をにごすのみ。
 長男のことも心配ですが、父のことも気になります。早朝、フェリーに乗り、日帰りでお見舞いに行きました。母は、ずっとつきっきりで看病をしていました。
 病室には瘠せた父の姿。その姿を見て、「お父さん、瘠せて若い頃の顔になったじゃない」と笑いながら言ってしまったのです。食事も取れず、苦しい思いをしていた父に向かって言ったその一言が、私の父への最後の声かけでした。
1か月半の入院で、会いに行ったのは2度だけ。胃がんの末期で手術も不可能だったことを、亡くなった後に知りました。それを知っていたのは、5人弟妹のうち弟1人だけでした。
父は何の病気かわからず不安でいっぱいだったと思いますが、最後まで痛いとか辛いとかは言わなかったそうです。

最後にかけた言葉、「若くなったじゃない」
何という、心ない言葉だったかと思い出すたびに心が痛みます。

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若かったせいか、病気の父や長男への心配りが出来ませんでした。
今、私にできることは、
「後悔をしないよう、自分にできることは精いっぱい力を尽くす」
それは、父と長男の遺した大切な宿題だと思っています。

       

PEACE・Orange Balloon Project
              5周年記念フォーラム
          「広めよう、緩和ケア」に参加して

                              前川 育

3月17日、小雨降る東京の青山通り。国連大学 ウ・タント国際会議場で開催された日本緩和医療学会主催、厚生労働省委託事業「がんに携わる医師に対する緩和ケア研修等事業」記念フォーラムに参加させていただきました。
内容は、PEACEの活動と活動報告でした。
印象に残ったものをプログラムから一部抜粋し、ご報告いたします。
(尚、抜粋は了承済みです)
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PEACEの活動 基調講演
「緩和ケア教育のグランドデザイン、PEACEの位置付け」
木澤義之先生(筑波大学)
 緩和ケアは大きくわけて3つに分けることができる。
@すべての医療従事者が提供するべき緩和ケアアプローチ
Aがんをはじめとする、生命の危機に直面する患者を診療する機会の多い医療従事者が実践することが望ましい基本的緩和ケア
B最後に緩和ケアを専門として提供する医療従事者が提供する専門的緩和ケア

 また、緩和ケア教育はその教育の時期から大きく卒前と卒後に分かれる。
症状の評価とマネジメントを中心とした緩和ケアのための継続教育プログラム) は、卒後の基本的な緩和ケアを短期間に修得することを目的として作成されたプログラムである。
 PEACE の学習到達目標は明確で、すべての卒後3 年目の医師が最低限身に着けていてほしい緩和ケアを習得する』ことである。そのため、内容は症状のアセスメント、がん疼痛のマネジメント、コミュニケーション、気持ちのつらさ(不安と抑うつ)、嘔気・嘔吐、呼吸困難、治療・療養の場の選択と地域連携に絞り、内容の難度も吟味して選択した。
 また以下のことを大切にプログラムの作成を行った。
1)医学的な状況を正確にアセスメントすること、
2)患者さんが現在何がつらいかを尋ねること、 
3)患者さん・ご家族の今まで生きてきた人生を知り、今一番大切にしていることを聞くこと、
4)患者さん・家族の医療に対する希望を知ること、
5)根拠に基づいた標準的な治療を推奨すること。
                              (以下、略)

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PEACEの活動 活動報告
「緩和ケア研修会の成果、その評価」

                   山本 亮先生
(JA長野厚生連佐久総合病院 総合診療科 緩和ケアチーム)

2008 年から始まった「緩和ケアの基本教育に関する指導者研修会」は計22回開催され、指導者研修会修了者は2,065 名。
 指導者研修会修了者を中心に、がん診療拠点病院を中心に全国各地で「がん診療に携わる医師のための緩和ケア研修会」(以下、緩和ケア研修会)が開催され、緩和ケア研修会開催数は2011 年12 月末時点で1,592 回、受講生も29,736 名。がん診療に携わる医師が系統的な緩和ケア教育を受ける機会となっている。しかし緩和ケアについての系統的な教育を受けることで、本来の目的である緩和ケアの質が向上したのかどうかについては明らかにされてはいない。

 教育は必ずしも即効性があるものではないため、緩和ケア研修会の成果は今のところ大きくはないかもしれない。
しかし、5 年間の取り組みの中で、緩和ケアの知識が少しずつ向上し、地域での連携の強化や緩和ケアの認知度の向上が図られてきていることからは、今後徐々に教育の効果が表れてくるのではないかと期待される。

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Orange Balloon Projectの活動 基調講演
   「緩和ケアの国民的普及とOrange Balloon プロジェクト」

内布 敦子先生
兵庫県立大学看護学部
 2007 年度から日本緩和医療学会は、厚生労働省からの委託を受けて、国民が緩和ケアを正しく理解し適切に医療を受けることができるよう、緩和ケアの普及活動を行ってきた。ポスター、チラシ、講演会、メディアを使った活動は今年3月で実質4年を終了。
緩和ケアに関連している6つの学会にもそれぞれ学会活動を通して普及活動を行っていただいた。しかしながら、一般市民の認識を変えることは非常に困難であり、依然として認知度は、「言葉と内容ともに知っている」が19.9% にとどまっている。

 普及を阻んでいるものは何だろうか。治療への強い期待、緩和ケアは治療をあきらめてからするものという誤解、医療用麻薬を使用することへの強い不安感、死を連想させるようなことを話題にすることを避けるといった患者側の要因が考えられる。
一方、医療従事者自身に症状緩和の知識が不足していること、患者に緩和ケアについて提案することへの強い抵抗感、緩和ケアの情報提供不足といった医療サイドの問題も当然あるだろう。
「患者や市民の理解を得ること」の前に「医療側が変わること」がもしかしたら一番必要なことではないだろうか。

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以上のような講演をお聴きして、私(前川)が感じた私見を述べます。
全ての医師に緩和ケア教育をし、全ての国民が緩和ケアの正しい知識をもつこと。
いつでも、どこでも質の高い緩和ケアを受けられる社会の実現を。
この2点を強く思っています。
「緩和ケア研修会」は、緩和ケアを理解している医師が開催する場合と、ただ義務的に開催する場合では、大きく内容(質)の違いがあるようです。
また、Orange Balloon プロジェクトが緩和ケアの国民的普及のためとは、知りませんでした。おそらく、多くの人が、各地でイベントをしたりチラシ配布をしていることすら知らないのではないでしょうか。「緩和ケアを、もっと広めたい」「質の高い緩和ケアを」と思った1日でした。



厚生労働省「がん対策推進協議会」
この写真は、3月1日の協議会(門田守人会長)の様子です。
5分間くらいテレビカメラが入り、このようにマイクで声を拾います。
           

 「次期がん対策推進基本計画」の見直し作業を続けてき協議会は、
1日に2012年度からの次期がん対策推進基本計画の厚生労働省案を了承し、小宮山洋子厚労相に答申しました。厚労省は、5月の閣議決定を目指します。
(インターネットで「がん対策推進協議会 厚生労働省」と検索すると、第32回の資料に基本計画案が掲載されています)

 今後5年間で、国のがん対策が進むことを心から願っています。
*******************************通常、患者委員は2年が任期ですが、小児がん専門委員会の委員と
緩和ケア専門委員会の委員の2名は留任し、4月から4年目を迎えます。
がん対策推進基本計画の策定にかかわることが出来て、とてもよい経験をさせていただきました。
                    

山口県の「がん対策推進基本計画」も、平成24年度に策定されます。
私たち県民が関心を持つことが、山口県の医療、またがん医療をよくしていくきっかけになると思います。

 

☆きららサロン便り☆
 毎週、火曜日と金曜日は「きららサロン」の日です。12名のボランティアスタッフが2名ずつ、交代で行っています。
お茶やコーヒーは、その場を和ませると共に話のきっかけにもなります。
「1000人目はどなたかしら」とスタッフとがん相談支援センターのNさんと話していましたが、気付いたのは1000人を超えてから!
「きららサロン」を開設した直後からいらっしゃっているAさんでした。
「喫茶きらら」と冗談で言うこともありますが、ホッとできるサロンを目指し、周南・下松・山口・防府からスタッフは車をとばしています。  




1.平成24年度総会
  日時:5月20日 13:30〜15:00 (13:00から受付)
場所:スターピアくだまつ 2階 第3会議室
                4月下旬に往復ハガキでご案内します
総会終了後に、県立総合医療センター がん看護専門看護師の山本知美さんに、
看護師の立場からみた医療についてお話をしていただきます。
山本さんは、大分県立看護科学大学を卒業。兵庫県立大学修士課程を経て、
現職。山口県のがん看護専門看護師は3人のみです。
抗がん剤の副作用で脱毛した方のためのタオル帽子。
「かぶってみてください」と言ってお願いしたら、こんなに素敵な笑顔で♪
「きららサロン」で医療的な相談があったときには、すぐに駆けつけて、患者さんのために的確な助言をしていただいています。

2.来年度の「市民のためのホスピスケア講座」の準備を始めました。
  
会場は、前々回と同じく、山口県総合庁舎さくらホールになりました。

現在、決まっているのは、
  8月26日(日) 「我が国におけるがん医療の実情」(仮題)
             九州大学大学院消化器・総合外科(第二外科)教授
                          前原喜彦先生
     外科医らしい精悍な表情の前原先生に、ご講演をお願いしたときの、
     爽やかな笑顔が印象的でした。
 
  9月15日(土)  埼玉県立がんセンター 余宮きのみ先生

     埼玉県立がんセンターには従来から緩和ケア科があり、専用病棟があります。緩和ケアチームが発足したのは、2007年5月。これをきっかけにして、同センターでの緩和ケアのあり方は大きく変化したそうです。緩和ケアチームへの依頼は、年間300件。
     講演は、とても理解しやすい内容だと思います。

<後記>
桜が咲き始め、この数日は特に春を感じる陽気となりました。
平成23年度も残り2日となり、駆け込み会報発送です。
今回は、私の都合で原稿が遅くなり校正の時間があまりなかったため、誤字・脱字があれば、お許しください。
次女が一人暮らしをやめて、自宅から通勤をしています。そこで、8年ぶりに
母親業をすることになりました。家が賑やかになり嬉しい限りです。
(まえかわ)


「アフラックはNPO法人周南いのちを考える会の活動を応援しています。」


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NPO法人 周南いのちを考える会