会報 45号 2015年4月発行
さくらの咲く季節に
前川 育
今年も、さくらの季節が巡ってきました。息子のことを何度も書いて恐縮なのですが、ピンク色のさくら並木を通ると例年のことながら、息子のことが思い出されます。
白血病とわかった直後の抗がん剤治療中も、さくらの季節。亡くなる1か月前に、病院から妹の家にタクシーで外出したときも、さくらの季節。
春になりさくらを見ると、4才から6才の2年間の闘病中に、息子は何を考え、何を感じていたのかを知りたくて、あのときに戻りたい気持ちになります。私の涙は、あのときに、枯れてしまいました。
今、孫娘は5歳です。女の子のせいかよくおしゃべりをし、いろいろなことを理解しています。「た〜くん、こんなに小さいときに死んじゃったの?可哀想。た〜くんにお菓子あげるね」「お空から、ば〜ばのことを見てるかな〜」
その様子を見ると、幼いと思っていた息子もいろいろなことを考えていたことがわかります。もっといっぱい話をしておけばよかったと後悔です。
先日、子どもが生まれる前からお付き合いのある先輩夫婦と食事をしたときに、子ども達が幼い頃の話になりました。
「た〜くんが退院している時に、みんなで太華山に行って遊んだよね」そうなのです。パニックになっている私に代わり、お弁当を作りレジャーシートまで準備してくださって、ふた家族が大喜びで遊びました。ワカメのおにぎりを覚えています。久しぶりに外に出て、笑顔がいっぱいでした。
たくさんの想い出は、私の宝ものです。天使のまま、本当に天使になって空に逝ってしまいました。あれから30数年、今、哀しみの種は、花を咲かせています。それも、希望の花です。
さくらの季節は悲しいのですが、がんで辛い思いをしている皆さんが希望を持てるよう、目には見えない息子の花を咲かせています。
今年度も、第11回「ホスピスケア講座」が無事、終了いたしました。
概要をご紹介いたします。
がん性疼痛治療の最前線」
講師:がん研究会有明病院緩和ケアセンター 服部政治先生
がんの痛みについて、詳しくご講演していただきました。
「日本人が、痛みを我慢するのは何故か?」それは、「我慢」が美学の日本だから。
・がんになっても痛みを我慢するが、それでは体は弱り、免疫力も低下する。
・がんの痛みは治療と一緒に考えなくてはならない。
・医療用麻薬と聞くと、「開始を躊躇する」「副作用を恐れる」「痛くても増やしたがらない」
・しかし、「躊躇しない」「恐れすぎない」「我慢しない」ことが肝要。
がん研有明病院緩和ケアセンター・がん疼痛治療科のアプローチは?
がんの痛みに行うIntervention
・三叉神経ブロック・肋間神経ブロック・内臓神経ブロック
・トリガーポイントブロック・末梢神経ブロック・脊髄神経ブック
・硬膜外くも膜下モルヒネ投与・脊髄くも膜下フェノールサドルブロック
モルヒネでも痛みが取れなく、どうしようもない事態に陥った時にも
脊髄鎮痛法がある。
講師:阿南 里恵さん(東京都)
若い女性に増えている子宮頸がんについて、体験をもとにご講演をしていただきました。
若年がん体験者は、妊孕性(妊娠のしやすさ)の消失など、その後の妊娠・出産に大きい影響があります。
若いがん患者さんは、
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がんによる将来の恐怖
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若年だからこそ「妊孕性消失」に関する将来の不安を抱える事になる。
今後、がん治療医と生殖補助医療専門医と専門カウンセラーによる的確な医療連携の構築が急務であると問題提起をされました。
講師:早稲田大学大学院非常勤講師 永堀宏美先生
1.こころが伝わるコミュニケーションとは?
・コミュニケーションとは、人間の本能的な伝達行動
・存在を観たしして、認める・承認欲求・生存欲求を満たす
・「いのち」を繋ぐ
・社会を形成する
・信頼の中で、こころを育てる
2.「伝えたいこと」をしっかり伝えるために
(1)コミュニケーションの基本理論
・聞く、聴く
・話す、伝える
・受け取る、理解する、判断する
3.「受け止める」コミュニケーション
・ありのままを「聞く(聴く)力」→人間力
・心から聴く→判断を下さず、ありのままを受け取る
・受け止めたサインを示す(返す)
・受容、承認欲求に応える
私たちが気を付けたいこと→笑顔のコミュニケーション
外見も大事
目線を合わせる
息子の伝えたかったこと」
講師:山下美香さん
山下貴大君は、小学5年生から8年間の闘病の末、1昨年の秋に亡くなられました。脳腫瘍、その後、大腸がん、白血病という過酷な8年間の中で、辛かったこと・楽しかったことなどの思い出をお母様との対談形式でお話をしていただきました。
亡くなる直前に。貴大君の手記が出版されました。
広島市内の中学や高等学校、図書館などに寄贈されたそうです。
最期のページに、「僕の人生を知ることで、あなたの視野が広がってくれれば嬉しい」とあります。
この日は、亡くなられてからまだ1年、想い出を語るには早かったかと思いますが、聡明なお母様からいろいろなメッセージをいただきました。
健康で生きることが当たり前と思いがちですが、貴大くんのような人生があることに思いを馳せて、生きていきたいと思います。
田中みづえさんのミニコンサート
周南市出身のシンガーソングライターの田中みづえさんの美しい歌声が、貴大君の元に届いたと信じています。
参加された皆さんから、「こころに沁みる感動的な歌でした」との感想が寄せられています。
講師:ケアタウン小平 山崎章郎先
(講演中) (スタッフと、はいポーズ♪)
「周南いのちを考える会」発会当時に講演会を開催し、お越しいただいてから、10年以上になります。
ホスピスケアの要点 ・苦痛症状を緩和する ・嘘をつかない・ボランティアとの協 ・死に関する話題を避けない ・困難状況における自己肯定が出来ずに苦悩している人々へのケア(スピリチュアルケア) ・グリーフケア(悲嘆ケア) |
聖ヨハネホスピス勤務医を経て、今はケアタウン小平で在宅医をされています。
家で死ぬということ ・いつでも主人公(自由である) ・過剰医療が避けられる(自然経過としての死) ・苦痛が軽減する(適切な緩和ケアが前提) ・変化する家族の力 |
山崎先生のような先生が全国に増えるといいなと思います。
在宅医療と病院の一般病棟や緩和ケア病棟、患者・家族にとって、どちらを選ぶかはとても難しいですね。
病院の在院日数も、少なくなっています。
山口県内は疼痛コントロールのできる開業医が少ないのでは・・という懸念もあります。 健康な時からの情報収集が必要です。
ケアタウン小平は、東京と小平市にあります。JR中央線・武蔵小金井駅で降ります。周りは静かな住宅地・・・・・だったと思います。
山崎先生が往診される車は、軽四。車にケタウン小平クリニックと書いてありますが、なんと取り外し可能なのだそうです(^-^)
患者さんのご家族の都合で、それを外しての往診もされるそうです♪
『日本の医療格差は9倍』 医師不足の真実
上 昌広著 光文社新書
センセーショナルな題名に惹かれて読んだ本です。
知らなかったことが多く書いてありますが、著者の独断もあるかも、と思
いながら興味深く読みました。(以下、引用)
・東京都の医師数はトップレベル。しかし、人口当たりの医師数は、東京より京都や徳島のほうが多い。
・人口当たりの医師数が最も少ないのは、埼玉県、千葉県、茨城県、神奈川県などの関東地方。?関東圏での救急車のたらい回しが日常的に行われている。
・医師不足の原因は医学部が西日本に偏在していることである。
・人口398万人の四国には4つの医学部があり、人口4260万人の関東には
22の医学部しかない。
・しかし、関東在住の高校生は、西日本は「異郷」と感じ受験しないことが多い。
・北海道は比較的多くの医師を養成しているが、あまりにも広大な土地ゆえ医師不足は深刻。
・私立大学医学部の授業料は、6年間で3,000万円以上。最も高額な私大は4,920万円。これでは、医師の世襲化が進むはずである。
・各地の大学医学部の現状も詳しく書いてありました。
「なるほど〜」と思える箇所が多々あり、興味深い内容でした。
私たちは患者になると、何故か弱い立場になってしまいます。
医学部の成り立ちや日本の医療の現状を知り、賢い患者になりましょう!
一読の価値ありだと思います。
To基金へのご寄付、感謝申し上げます。(2014年5月〜2015年3月31日)
天谷京子様・石田朝子様・磯村美穂様・内山敏江様・川崎幹子様・ 上條敏子様・河村弘様・木村知子様・久芳千加子様・久村志津代様 實森様・高松素子様・田中政晴様・冨永渥夫様・戸村禮子様・ 野村文子様・蜂谷悦子様・平岡恵子様・廣繁宗男様・藤井治美様・ 朋友商事様・保見恵子様・松村壽太郎様・吉水和子様 |
昨年の12月から、サポーターと称し毎月3000円を振り込んでくださる方がいらっしゃいます。見ず知らずの方からの「がん患者さんへの支援をしてください」とのメッセージに、感謝の気持ちでいっぱいです。 がんばります。
お
★がん患者サロン「きらら」
場所:山口県立総合医療センター2階
日時:毎週火曜日と金曜日の10時半から午後3時です。
がん関連の本もたくさん揃っています。
数枚のクッキーとコーヒーやお茶を飲みながら、憩いのひとときを♪
ご都合のよい時間にお越しください。
きららサロンでは、がんの患者さんが明るく過ごす場所、辛い時にすごす場所、仲間の出来う場所、受診のついでに過ごす場所・・・です。
先日は、同窓会のような雰囲気でした(^-^)
★そよ風の集い
がんの患者さんとご家族の集いです。
ご自由にご参加ください。お待ちしています。
防府の「きららサロン」は遠いと思われる方や、会員の皆様のお知り合いの方に、お伝えください。
場所:下松中央公民館(ほしランドくだまつ内)下松市大手町2-3-1
日時:毎月第2木曜日13:30〜15:30
★入会とTo基金ご寄附のお願い
振込先(郵便振替):口座番号→01370-9-79087
口座名義→NPO法人周南いのちを考える会
年会費:2,000円 賛助会員:5,000円 To基金:お気持ちを♪
2015年度会費の振込用紙は、次回総会資料をお送りするときに同封させていただきます。
<後記> 今年度、最終日の駆け込み発行です。毎年のことながら1年の過ぎるのが速く感じられます。総会は5月24日(日)に予定しています。 ご案内は、4月後半にお知らせします。ご参加をお待ちしております。 (まえかわ) |