はじめに
近況と会のこれまで
前川 育
山口県を離れ、もう半年以上になりました。
その間、8月と9月は次女の出産のため、徳山に帰っていました。その時の山口県の居心地の良さ、見慣れた風景にこころが和み、会の仲間とのふれあいで元気を取り戻しました。
今日は、途中から入会いただいた方も多いので、「周南いのちを考える会」の成り立ちと活動してきた15年の経過をお伝えしようと思います。
※2001年に、「山口県東部に緩和ケア病棟を」の願いのもと、発起人3人でNPO法人「周南いのちを考える会」を設立しました。
「長男が白血病で亡くなり、自分の3度のがん経験で会を立ち上げた」と説明したところ、新聞社が取り上げてくださいました。
それを読まれた方たちから賛同の電話が多くあり、会員になってくださいました。多くの方から、「がんということを人に言えない」という声が!
※思い切って署名活動をし、25,000人の署名が集まり、2002年9月山口県知事へお届けしました。
※県や厚労省への働きかけをし、2008年3月31日やっと市民運動で緩和ケアの特例病床25床が許可され、徳山中央病院に「緩和ケア病棟」が 開設されました。 (この間、国・県・病院との折衝に苦労)
(集まった署名) (当時の二井知事へ署名をお渡し)
※初期目的の「緩和ケア病棟」が開設されたことにより目標が達成され、会を解散することも考えましたが、がんがなくなるわけではないので、続行決定しました。
※県立総合医療センターのご理解により、がん患者さんとご家族のための「きららサロン」を2009年9月に開設して7年になります。
ボランティアは14名で、がん経験者及び、そのご家族です。参加者累計は3,000人を超えました。お話を「聞いてあげる」のではなく、「聴かせていただく」姿勢と、距離感を大切にしています。
(ほっとできる空間のきららサロン) (書籍、資料の貸し出しも)
※この15年間に、講演会や市民のためのホスピスケア講座を開催し、いのちの大切さや、がんについて学びました。
(山梨県の在宅ホスピス医内藤いづみ先生講演会)(スターピアにて)
※会報発行・がん患者さんからの相談やサポートをしています。
(15年の間に、たくさんの患者さんとの忘れられない想い出があります)
※前川が厚労省(がん対策・緩和ケア)や、文科省(がん教育)の委員会で
一般市民の視線から発言をしました。(委員の役を受けました)
公的にも個人的にも、各地のがん拠点病院がん相談センターなどを見学し、
「がん相談支援センター」や「患者サロン」を実際に目で見て、病院格差など、考えさせられることが多々ありました。
(北海道大学病院 (他医療圏の相談支援センター)
相談支援センター入口)
無我夢中の15年でしたが、過ぎてしまえばあっという間ですね。
「周南いのちを考える会」の代表としての仕事と、娘たちのサポートを天秤にかけるわけにはいかず、前川は今年度から小田原を拠点にしながら、月に1~2度は山口に帰っています。
距離は遠くても心は、「周南いのちを考える会」にあります。
代表が県外にいるということで、心苦しく思っています。どうか、今後ともよろしくお願い申し上げます。お手紙、お電話などお待ちしています。
緩和ケアについて
今まで、厚生労働省の「がん対策推進協議会」や、「緩和ケア推進検討会」、
「緩和ケアワーキンググループ」などに、かかわらせていただいていました。現在は「がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会」の構成員です。
「緩和ケア」という言葉を聞いて、どんな印象を持たれますか?
以前は、がんの治療法もなくなり治癒しないとわかった時から「緩和ケア」という言葉が使われていました。緩和ケア=終末期でしたね。
今は、「がんと診断された時から緩和ケア」と「がん対策基本計画」に書かれています。
しかし、医療現場には浸透しているかというと、疑問です。がんと診断したときに、医師は「患者さんが納得できる詳しい説明をし、理解しているかを確認」、患者は「わからないことは尋ねる」というのが理想的な姿ですが、ごく一部ではないかと思われます。
がんの告知をされた患者さんをサポートする体制は、病院によって大きく違いがあります。この差がなくなることを願って頑張ってきましたが、いつになるのやら・・・・・。
がんに携わる医療関係者は、「がん対策基本計画」を見た(読んだ)ことがあるのか疑問です。
病院は、国が決めた指定要件(方向性)に沿うように、右往左往させられている状況があります。
患者さんの中で、 がん相談支援センター・地域連携室・緩和ケアチーム・緩和ケアセンターなど、それぞれの機能を理解している方はとても少ないです。
医療用麻薬だけが、痛みをとる手段ではありません。麻酔科医は痛みをとる専門家です。(ただ、手術の時に麻酔をするだけの医師は無理かもしれません)このことも、あまり知られていないのではないかと思います。
本当に心ある患者のことを親身に考えて、日々、医療に携わっておられる医療関係者も、実は多いのです。私も尊敬する先生方が多くいらっしゃいます。
でも、患者の心身の痛みに疎い医療者も・・・・・。
これを解決するには、医学部での緩和ケアの教育が必須と考えますが、大学は文科省、医療(病院)は、厚労省!
両者は、それぞれ考え方が違うようです。
では、私たちは、どうすればいいのでしょうか?
日頃から、医療情報をしっかり頭に入れておくことが必要だと思います。
また、信頼できる相談相手を見つけておくこと。
以前、主治医に激痛を訴えても改善せず、「死ぬほど痛い」と言われた方が、急遽転院を願い出て、緩和ケアを行う病院に何とか転院できました。翌々日に、専門的な疼痛コントロールで痛みが消えました。
その時に、「今年のお正月が、今までの65年の人生で一番幸せなお正月だ」とおっしゃって、1か月間ご家族との穏やかな日々を過ごされました。
もし、主治医に遠慮し、我慢をして転院しなかったら、その方はどうなっていたことでしょう。
どうか遠慮しないで自分の身体、家族の身体を守ってくださいね。
病気と向き合う日々、患者さんご本人とご家族が、希望をもって後悔のない日々を送っていただけることを心から願っています。
また、今、健康で一生懸命、仕事や家事をされている皆さま、感謝をもって日々を過ごしていただければ・・・・と願っています。
(生意気な言い方でごめんなさい)
本のご紹介
『お母さんに 会いたい』 あおば出版(1200+税)
2005年の初版なので、もう在庫はないかもしれませんが、ご紹介したい本です。
インターネットの掲示板「2チャンネル」への書き込みを、インターネット環境を持たない人にも読んでほしいという願いで、本になったのだそうです。
お母さんを亡くされた方の言葉や気持ちが載っており、身につまされます。
お母さんが健在の方は、その存在が幸せなことに気づいてほしい、お母さんを亡くされた方には、同じような気持ちを共有してほしいと思いました。
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「お母さんのおにぎり食べたい」 「お味噌汁も」
「お母さん、今ならもっと優しくできるのに。 親孝行したいのに。
気づくの遅くて ごめんなさい」 「お母さんに、もう一度会いたい」
「中学生の頃が、一番、母が恋しかった」
そんな言葉が、数多く綴られています。
インフォメーション
★講演会『がんとともに、自分らしく生きる』のお知らせ
講師:虎の門病院(東京) 臨床腫瘍科部長 高野利実先生 日時:2017年1月21日(土) 14:00~15:30 会場:さくらホール(周南総合庁舎) お申し込みは、はがきでお願いします。 山口県初の、高野先生の講演会です。 皆さまのお越しをお待ちしています。 |
★TO基金へのご寄付(2016年5月~2016年10月31日) 23名
天谷京子さま・石田朝子さま・石田美恵さま・磯村美穂さま・ 内山敏江さま・上條敏子さま・河村弘さま・木村喜美子さま・ 久村志津代さま・久芳千加子さま・塩田令子さま・鈴木寿子さま・ 清木幸子さま・高松素子さま・田中政晴さま・戸村禮子さま・ 内藤雅枝さま・野村文子さま・原美智子さま・平岡恵子さま・ 廣繁宗男さま・藤井治美さま・朋友商事さま |
★会費をお忘れの方がありましたら、下記へお振込みを、よろしく
お願いします。
会員144名で会費納入は、現在83名です。
・振込先 郵便局 口座記号 01370-9-79087 NPO法人周南いのちを考える会 |
年会費: 2,000円
賛助会員:5,000円
TO基金:お気持ちで・・・・・
患者さんのサポートや赤字補てんに使わせていただいています。
★がん患者サロン「きらら」
場所:山口県立総合医療センター2階
日時:毎週火曜日と金曜日の10時半から午後3時です。
がん関連の本がたくさん揃っています。
★がん患者会「そよ風の集い」(ラ・ビューの集いを名称変更)
・場所:徳山中央病院 西館3階多目的室
・時間:毎月第1木曜日 午後1時半から3時半
・お近くの方、お越しくださいね。
<後記> 「秋の日は釣瓶落とし」と言いますが、その通り! さっきまで明るい日差しでしたが、只今夕方の5時、外は真っ暗になっていました。 最近は寒くなりましたね。お風邪などひかれませんように・・・・・・。 高野先生の講演会を、どうぞよろしくお願いします。 山口県には腫瘍内科医は7人しかいらっしゃいません。 以前はゼロ人だったので、朗報ですね。 (まえかわ) |