2010年10月25日発行 第33号より
2010年ホスピスケア講座紹介(1−3)

 「第7回市民のためのホスピスケア講座」が始まりました

 

 1回目のホスピスケア講座は、711日に開催。この事業は、読売新聞社「正力厚生会」からの助成金で開催しています。(3回の講座を要約し、ご紹介)

1回目711日)
「夢に向かって一緒に走ろう」    
講師:大野寿子さん

(メイク・ア・ウイッシュオブジャパン事務局長)

 メイク・ア・ウイッシュオブジャパン(MAWJ)は、「難病の子どもの夢をかなえる」ことを目的とした国際的なボランティア団体です。

組織がしっかりしているのは、事務局長・大野さんのご苦労の賜物だと思いますが、そんなことは感じさせない明るくパワフル、そして輝いている女性でした。 

 突然病気になり、辛い治療に耐えている子どもたちのそれぞれの夢。本人も家族も、「病気と向き合う生活しかない」と、諦めている時の夢の実現の様子が映像と共に紹介されました。

「パパのお嫁さんになりたい」という可愛い女の子が、ウエディングドレスで結婚式。とても嬉しそうでした。
 「News Flash」2010には、子どもたちの輝く笑顔の写真が掲載されています。この笑顔は、元気になったときには素敵な思い出となり、不幸にして亡くなってしまったときには、遺された家族の生きる力となっています。

  メイク・ア・ウイッシュオブジャパンの活動は、「三輪車」だそうです。活動資金・広報・夢の実現の3つです。なるほど!
(是非、MAWJのホームページをご覧ください)

 

2回目87日)
「がんと心」    
 講師:内富庸介さん

(岡山大学大学院・医・精神神経病態学教室)

 インフォームドコンセントは、説明と同意だが、その間に情(気持ち)が入らなくてはいけない。      説明→(気持ち)→同意

という話から始まった、内富先生の講座です。

 

@    毎年64万人ががんになり、34万人ががんで亡くなっている。そのうちの20万人は、配偶者の死。

A    悪い知らせの定義→患者の将来への見通しを、根底から否定的に変えてしまう。

B    どのように乗り越えればいいか?

☆情報の整理

☆心の援助

C    がんと聞いた時は、「心の直下型地震」のようなもの。

D    最初の23ヶ月、3人に1人は鬱状態になり、3年くらいで10%に減る。

E    再発の不安

☆精神的後遺症(身体機能の喪失と回復)

☆職場復帰(社会生活の再開)

☆病気の前と後では人生設計が変わるので、再設計

F    がんは家族にも影響をもたらすので、精神腫瘍科では家族も患者と捉え治療することもある。

家族にとっても「心の直下型地震」である(精神腫瘍科)

G    家族は、何をすればいいのか。

☆自分のおしゃべりは110の割合くらいに抑える。

☆励ましは、却って患者にとって辛い場合がある。

☆患者に、今までの役割の喪失を感じさせないようにして、これまで通り 

にしてもらう。

☆患者の尊厳を傷つけない(食事・入浴・トイレは可能であれば、自分でしてもらう)

H    コミュニケーション

☆コミュニケーションをとるときに、見る(感じる)のは、

相手の表情や姿勢や身ぶるなどが55%。声の調子が38%、言葉は7

I    基本的なコミュニケーション技術

☆身だしなみを整える。

☆座る位置に配慮。

☆話を聴くスキル

・目や顔を見る ・あいづちを打つ

   ☆質問をするスキル

     ・開かれた質問

   ☆共感するスキル

      ・共感→患者の気持ちを繰り返す

     ・承認→患者の気持ちは、もっともなことだと正当性を承認する

     ・探索→患者の気持ちや気がかりを探索し、理解する

         (例→ご心配なことを教えていただけますか?)

J    セカンドオピニオンは最初にとる→医療者との関係が長続きする

K    医師は、悪い知らせを伝えるときには、正直にわかりやすく、丁寧に伝えることが大切。

「一緒に取り組みましょうね」と言葉をかける

L    がん医療における患者と医師間の共感について

☆共感と博愛

   ・相手の気持ちを共有すること

   ・相手のおかれた立場を踏まえて、気持ちを理解すること

   ・理解したことを、相手に伝達すること

☆博愛

   ・進化論的→イルカ

   ・道徳的→マザー・テレサ、杉原千畝

   ・意図的→医療者のコミュニケーション、心理療法

M    セカンドオピニオンを受けたいと、医師に言えない場合、自分の人生がかかっているのだから、まず「セカンドオピニオンについて教えてください」と声をかける。

         

3回目94日)
「相手の心に寄り添うために」
 〜コーチングの活用〜    
講師:平沢永子さん

(医療コーディネーター・ウェルネスコーチ)

 今回は初めての試みで、午前10時から午後3時までの講座でした。参加された皆さんの感想は、「あっという間に時間が過ぎました」とのことでした。

Tコーチングとは

 1)コーチ(COACH)の語源 → coachは馬車に由来する

   「大切な人をその人が望むところまで 送り届ける」 

 2)コーチングとは  (定義)

   相手の主体的行動を促すコミュニケーションスキル

 3)コーチは

   相手のやる気や持てる力を引き出しながら、達成したい目標や問題解決に

向けて伴走する 「大きな耳、小さな口、優しい眼差し」で

U.コーチングの基本的スキルは

  傾聴 → 承認  → 質問  → 提案

  (聞く=耳を開いて音を聞く)   (聴く=耳を使って心を聴く)

 傾聴

. 話しをさえぎらない

 2. 受容的なうなずきやあいづちを打つ

 3. 相手の感覚を大切にしてそれを受容する

 4. 話しのキーワードを繰り返す(バックトラッキング)

 5. 相手の話を要約し、確認する

 6. 相手に共感する

 

承認

 相手の存在を肯定的に認めることである

・相手に承認されることにより人は自信が付いたり、やる気がおきる、

自己肯定感が高まる

(「○○さん、おはよう!」「○○君は優しい子ね」と、名前を呼ぶ)

1)種 類

    ほめる、気持を伝える、事実を伝える、任せる、

存在に気づいていることを伝える、叱る

2)承認が出来るようになるためには

    ・自分を認める 

    ・相手を良く観察する

3)伝え方

  A:Youメッセージ 

    相手の存在・行動・結果そのものについて伝える 

 「あなたは立派だ」「よく頑張ってるね」

    「100点すごいじゃない」

YOUメッセージは上から下への評価 的イメージが強い)

  BI(We)メッセージ

          相手の存在・行動・結果に対する自分(自分達)の

感情や思いを伝える

「あなたの頑張りに私は励まされます」

「100点とるほど頑張ったことが、お母さんはとても嬉しい!」

「○○ちゃんがいてくれて、お母さんは嬉しい」

(私の思いを伝えるので、相手は素直 に受け取りやすい) 

 質問

   1)質問の目的・意図

     @自分が必要な情報を収集する

 A相手の考えを深めさせる

     相手の中にある答えを引き出す

    コーチングにおける質問の意図は、クライアントが自分で答えを

見い出す道しるべ。どのような質問をどのようにするかは非常に重要で

コーチングのコアのスキルでもある。

良い質問をするには傾聴が基本!

提案

1)提案の意義

n      提案により相手の思考、視野が広まる

n      効果的な提案は相手が進もうとするプロセスやゴールをはっきりさせ、目標に向かって行動が起こせる

2)提案のポイント

n      提案前には相手の話を十分聴く

n      許可を取ってから提案する

「1つ提案しても良いですか?」

n      具体的で明確に提案する

n      自由にYES・NOを選択できるように

n      提案は1回に1つとする

   複数浮かんでも最も重要な提案を、1つ選ぶ(最大3つまで)

 

☆以上は、パワーポイントを使って話された内容です。後半は、4人1組になりコーチ・クライアント(相談者)・観察者になり、その学びを体験しました。

 

 

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NPO法人 周南いのちを考える会