山口県議会における「緩和ケア」の討論

山口県議会会議録より抜粋引用

平成 18年 6月定例会-06月26日−02号
 P.31 ◆ (石丸典子さん)

次に、がん対策についてお尋ねいたします。
 皆様御存じのように、今国会で「がん対策基本法」と「自殺対策基本法」が成立されました。
 もちろん趣旨は異なりますが、二十一世紀のこのときに、いかなる場合でも個人の命を守り、健康で、そして幸せに生きる権利を擁護しようという法律ができましたことは感慨深いと言えます。
 我が国は、一九八一年から日本人の死亡原因の第一位をがんが占め、三人に一人ががんで亡くなっています。また、十年後には、二人に一人ががんで亡くなると予想されており、私たちの周りでもこの数字を実感できます。
 このたびの基本法により、日本ではおくれている、一、放射線治療の専門家の育成、二、緩和医療、いわゆる緩和ケアの充実、三、早期発見につながるがん検診の受診率向上、四、居住地域に限らず同水準の治療が受けられる医療の均てん化、すなわち地域格差の是正に取り組むこととなります。
 少しでも「対がん戦略」が進むことを国民の一人として大きく期待するとともに、関係者が患者や患者の家族の立場に立って、県民の生命を守る責務をしっかり遂行されることを願っています。
 本県も、また全国的にも、早期発見につながるがん検診受診率は低迷が続いており、その対策が急がれるところですが、本県の胃がん検診率が一四%台、肺がん三○%台、大腸がん一八%台、そして子宮がん、乳がんなどは一○%台と、全国平均並みですが、死亡率は肺がんが男女とも高く深刻です。
 また、受診率は、市や町の取り組みにかかっているため、地域差が出ているのも問題です。
 平成十六年度のデータですが、肺がん受診率で比べると、全国平均二三・二に対して、山口市は一六・七、同じ都市部の周南市で六六・一とかなり差が出ています。また、個人検診の都市部と集団検診の多い山間部でもかなり差がつき、大腸がん検診で比べると、防府市八・六に対して、秋芳町七七・九と九倍の格差が出ています。
 がん死亡患者の七○%は、初診時に既にステージ四とかの進行期であったというデータもあり、我が国も本県も、早期発見の体制確保が求められています。
 そこで、三点お尋ねいたします。
 一点目、このたびのがん対策基本法の中に受診率の向上が挙げられているように、県は、各自治体と連携をとり、受診率アップに向けたアクションを起こすべきと思いますが、いかがでしょうか。
 二点目、地域格差のないがん情報の提供の場として、患者や家族のがん専門相談窓口となる「がん相談支援センター」の整備と充実が強く望まれますが、いかがでしょうか。
 三点目、がんと診断されたそのときから「緩和医療」はスタートし、治療と並行して受けられるようでなければなりません。早い時期からの緩和医療の選択ができる体制を整えるべきですが、いかがでしょうか、御所見をお聞かせください。

P.46 ◎ 知事(二井関成君)

次に、がん対策についてであります。
 がんは、昭和五十六年以来、本県の死亡原因の第一位であり、県としても、これまでもがん予防や検診に関する普及啓発、がん登録事業、拠点病院の整備、緩和ケア病棟の整備等、各段階に応じたがん対策を講じてまいりました。
 しかしながら、がんによる死亡は今なお増加しており、がん対策は一層重要性を増しておりますことから、本年度、がん対策を重点施策に位置づけ、取り組みを強化しているところであります。
 そこで、まず、がん検診の受診率についてであります。
 がん検診の実施主体は市町となっており、県は、これまで、検診キャンペーン等の普及啓発や検診の精度管理の面から、市町のがん検診を支援してまいりました。
 しかしながら、お示しがありましたように、その受診率は、全国と同様に、必ずしも高いものではなく、また、市町間にばらつきが見受けられますことから、その改善を図っていく必要があると考えております。
 このため、本年度は、市町の担当者、検診機関、公衆衛生の専門家等によるがん検診をめぐる現状分析と問題解決に向けた幅広い検討を行い、得られた改善方策を各市町に周知徹底することにより、県内全域での受診率の向上と格差の解消を図ることにいたしております。
 次に、「がん相談支援センター」の整備・充実についてであります。
 がん患者やその家族の方々は、病状に応じた最新の治療方法やセカンドオピニオンなどの医療に関するニーズ、再発・転移の不安、就労や経済的負担に関する悩みなどを持たれておりますことから、これらに的確に対応できる総合相談窓口を確保することが重要であります。
 このため、県といたしましては、お示しの「がん相談支援センター」をあわせ持つ「地域がん診療連携拠点病院」を二次医療圏に整備をし、相談体制の確保に努めてまいりたいと考えております。
 次に、緩和医療についてであります。
 従来、緩和医療は、末期がん患者に対する終末期医療を中心に考えられておりましたが、近年では、患者の療養生活の質の維持・向上を図ることを目的として、早期から終末期まで、患者の状況に応じて計画的に提供されるべきであるという考え方が広まってまいりました。
 このため、県におきましては、がん治療の段階に応じて患者の求める緩和医療を提供できるように、医療従事者に対しまして最新の緩和医療についての研修を行うなど普及啓発を行い、緩和医療の質の向上に努めてまいります。
 今後とも、県といたしましては、がん医療を初めとした県民の要望にこたえられるように、がん対策基本法の趣旨も踏まえつつ、市町、医療関係機関等との連携を図りながら、総合的に施策を推進をしてまいります。
 
平成 16年 2月定例会-03月08日−06号
P.55 ◆ (藤井律子さん)
次に、緩和ケアについてお尋ねいたします。
 近年、最先端の医療技術の進展や医療機器の開発等により、がん患者の生存率や治癒率も高まってきておりますが、しかし、目覚しい医療の進歩の中、一方では、がんの痛みと闘いながら亡くなっていく方もたくさんいらっしゃいます。
 日本人の年間総死亡者数は九十万人以上、その三分の一の約三十万人はがんで亡くなっています。県内においては、昨年度、四千百二十人の方が亡くなっています。
 皆様方にお世話になっておりました私の夫は、がんの手術後、一度は元気になりましたものの、進行の速さには勝てず、六カ月の闘病の末、亡くなりました。
 しかし、その間は、山口県立中央病院の先生方の手厚い治療やスタッフの皆様方の温かい看護のおかげで、充実した日々を過ごすことができました。
 五十四年の人生の最期の瞬間は、家族の見守る中、お二人の主治医の先生にさっと腕を伸ばし、「お世話になりました」と握手をしながらきちんとお礼を言い、私の腕の中で、「いい人生だった。ありがとう」と、感謝の言葉を残し旅立ちました。
 最期の瞬間まで尊厳を持って生き抜いていった夫のことを考えると、実に見事な死にざまであったと誇りに思いますし、すべてのがん患者さんにこのような最期を送らせてあげたいと思っていた折、「県東部に緩和ケア病棟を設立してほしい」と運動を立ち上げられた「周南いのちを考える会」の人たちと出会いました。
 県立中央病院での夫の入院生活は、まさにその会の人たちが求めているホスピスの心そのものだと知り、この運動にかかわるようになりました。
 昨年十二月、県東部においては、光市議会が光市立病院に緩和ケア病棟を整備する請願を採択したところですが、これは、署名運動や地域での啓発活動など、「周南いのちを考える会」の日々の活動の成果であると思います。
 先日、公明党の代表質問で、県東部を初めとする県内の緩和ケア病棟の整備について取り上げられましたが、この運動を進めてきた者の一人として、この議会で取り上げていただいたことにお礼申し上げます。ありがとうございました。
 国内のホスピス、緩和ケア病棟は百二十四施設、二千三百七十二床あり、そのうち県内には現在三カ所ありますが、残念ながら県東部にはまだありません。一日も早い設置を願っております。
 同時に、実際に終末医療を考えるとき、緩和ケア病棟という入院施設とともに、自宅療養を望む患者さんへの支援として、訪問看護ステーションで働いていらっしゃる看護師さんのレベルアップも必要です。
 今後の課題として、患者・家族が最も過ごしやすいと感じることのできる場所を提供し、サポートすることが大切だと考えています。
 自宅、病院、緩和ケア病棟と選択肢がふえることによって、人生のファイナルステージを自分の書いたシナリオに沿って有意義に生きることができると考えるからです。
 それには、病院では、医師や看護師のチーム医療でよりよい医療を提供していただき、自宅で最期を迎える方には、訪問看護ステーションのサービスの充実を図ることが必要だと考えます。
 以上のことから、私は、患者の立場に立った看護の姿勢と、患者に向き合いながら残された時間の生活の質を高めるようなケアのできる感性豊かな看護師の存在が、今以上に必要であると思います。
 県におかれましては、看護師のより一層の質の向上を目指し、諸施策を進められておられる中、こうした緩和ケアへの取り組みに対する県の御所見をお伺いいたします。

P.67 ◎ 健康福祉部長(石津敏樹君)
次に、緩和ケアについてのお尋ねであります。
 近年の疾病構造の変化や医療の高度化に伴い、看護師の役割が拡大し、その資質の向上を図っていくことが重要となっております。このため、これまでも、看護職員実務研修会を初めとする研修の実施や、本年四月、全国初の准看護師の通信制による看護師養成施設の県内設置など、看護師のレベルアップに取り組んできているところであります。
 お示しの緩和ケアを実施するに当たりましては、がん医療の高度化、専門化に対応できる能力を備えた看護師を養成する必要がありますことから、今年度新たに、病院の看護師を対象に、がんに対する一般的な知識に加えて、痛みの適切な緩和方法、患者・家族への精神的サポート等の講義や緩和ケア病棟での実習等、がんについての専門的看護ケア研修に取り組んでいるところであります。
 こうした中、今後は、住みなれた地域の中で療養生活を送りたいという在宅がん末期患者の増加が予測されますことから、在宅緩和ケアへの対応を充実していく必要があると考えております。
 この在宅緩和ケアの中心的な役割を担う訪問看護ステーションの看護師には、特に、患者・家族との十分なコミュニケーションと、それに基づく信頼関係のもと、在宅患者の病状の変化に対応した的確な看護判断や迅速な看護技術の提供が求められますことから、こうした専門研修の実施に向けて、カリキュラム等について、関係医療機関、団体等と検討していくこととしております。
 県といたしましては、今後とも、緩和ケア病棟の整備の促進や看護師の育成等、緩和ケアの充実に鋭意努めてまいります。
 以上でございます。

平成 16年 2月定例会-03月02日−02号
 P.56 ◆ (小泉利治君)
次に、ホスピスケア、緩和ケアについてお伺いいたします。
 ホスピスケア、緩和ケアとは、悪性腫瘍やエイズ疾患の末期である患者の方々に、医師、看護師、カウンセラー、栄養士、ボランティアの方々によって、痛みのコントロール、諸症状の軽減、患者や家族の精神的苦痛を和らげるための質の高いケアをいい、緩和ケア病棟とは、患者の方々が家にいるときと同じように、最後まで十分自分らしく生きる場所です。
 このように、がん対策は早期発見に努めることがもちろん大事なことですが、いま一つ求められていることは、人間としてどのように病と向き合い、最後まで自分らしく生きたかということです。言いかえれば、医療提供者は病気を治すだけではなく、患者の方が選んだ、その人らしい生き方をサポートすることが求められています。
 現在、山口県におきましては、一九九二年に山口赤十字病院の三床からスタートし、厚生労働省が承認した緩和ケア病棟は中西部の三病院の七十五床だけで、その数は県内のがんによる死亡者に対して一○%にも満たないことから、増床と県東部への設置を求める声が強く出されているところであります。
 しかし、ハード面など改修が必要なことから、経営・財政的に踏み切れない病院も多いと聞いておりますが、県として、緩和ケア病棟の整備について、今後どのように取り組んでいかれるのか、お聞かせください。

P.69 ◎ 知事(二井関成君)
次に、緩和ケア病棟の整備についてであります。
 近年、がん患者が増加する中、患者に安らぎを与え、家族の負担を軽減できる緩和ケアへのニーズが高まっておりますことから、緩和ケア病棟につきましては、その整備を進めていく必要があると考えております。
 このため、県におきましては、これまで医療機関等との連携による調査・研究や研修の実施等、緩和ケア病棟の整備促進に取り組んできたところであります。
 この結果、現在、下関市、宇部市、山口市の三病院で合計七十五床が整備され、人口当たりの病床数では全国二番目の整備状況となっております。
 こうした中で、より充実した緩和ケアのためには、特に家族や友人による心の支えが必要であり、できるだけ身近な地域に整備されることが望ましいことから、お示しの東部地域につきましては、これまでも医療機関等に整備に向けた要請を行ってきたところであります。
 しかしながら、緩和ケア病棟の整備を進めるに当たりましては、大規模な改修を要すること、緩和ケアに精通した医師、看護師等が多数必要であることに加え、増床による整備が行えないことなど多くの課題がありますことから、県といたしましては、東部地域を初めとした県内の緩和ケア病棟の整備に向けて、今後とも、増床規制の緩和や補助制度の充実について国に対して強く要望するとともに、引き続き医療機関等に整備に向けた要請を行うなど、より一層の取り組みに努めてまいります。

平成 14年 2月定例会-03月05日−03号
P.9 ◆ (塩満久雄君)
次に、県立中央病院についてお尋ねをいたします。
 防府市にある県立中央病院は、県央部にあって、地域の中核的な医療機関として大きな役割を果たしてきたことは周知のとおりであります。
 しかし、平成十二年度の決算で二億三千万円余りの赤字を計上し、累積赤字は遂に六十一億円にも達しています。
 このため、県は、平成九年度から五カ年計画の健全化計画を立てて赤字解消に乗り出していますが、なかなか改善いたしません。
 中核的医療機関として地域医療を支えてきた病院ではありますが、交通網の発達や医療技術の進歩などで、自治体病院の果たすべき役割が変わってきている一方で、こうした慢性的な赤字続きの経営体質から、経営手法や役割を見直す動きが全国的に広がっています。
 福岡県では、「既に特殊な部分を除いて、県立でなければならない必然性はない」として、存続を含めた経営手法の検討を進めるそうであります。
 特に、自治体病院の場合、民間病院に比べて合理化がおくれているといった指摘や、統廃合など医療機関の機能分化を図り、専門性の高い高度医療のための自治体病院を整備すべきだという専門家の意見もあります。
 そこで私は、中国地方にはまだない、がんセンターとして整備してはどうかと思うのであります。
 平成十一年度の県内の死亡原因を見ますと、一位ががんであり、二位が心疾患、三位が脳血管疾患となっており、特にがんの死亡者は四千三百三十一人と多く、死亡率は全国平均を上回っている上、高齢化の進展に伴って、年々ふえています。「二十一世紀の安心できる医療を目指して」と題して出された県の保健医療計画の中にも、がんに対する高度な特殊医療体制の整備と、専門的な医療体制の整備が挙げられています。
 こうしたことから、県立中央病院をがん治療のための専門性の高い高度医療機関である、がんセンターとして再編成してはどうかと思うものであります。
 慢性的な赤字に悩む自治体病院の立て直しには、統廃合、民営化、経営分離などさまざまな手法がありますが、国も構造改革の中で、公的病院の再編成に取り組んでいるときでもあり、この際、再生のための方策を検討する時期に来ていると思うものですが、御所見をお伺いいたします。

健康福祉部長(佐久間勝雄君) 
私からは、県立中央病院をがんセンターとして再編成し、再生のための方策を検討してはどうかというお尋ねにお答えします。
 県立中央病院のがん診療につきましては、これまでも、がん診療体制の整備や緩和ケアへの取り組みを進めますとともに、地域がん登録センターとして情報提供を行うなど、重点医療として推進しているところであります。
 こうした中、県におきましては、現在、今後の病院運営の指針となります新たな五カ年計画を策定中であり、次期計画における主な役割として、がん診療など高度専門・特殊医療を一層推進していくこととしております。
 特に、がん診療につきましては、難治がん、再発がん、合併症を伴うがんの治療を重点的に行うとともに、新たな取り組みとして質の高いがん医療を提供するため、国が整備を開始した「地域がん診療拠点病院」の指定を目指すこととしております。
 また、県立中央病院は、全国のがん診療高度専門機関二十九病院で構成されております全国がんセンター協議会に本県で唯一加盟をし、がんの予防や治療の研究を行っておりますが、さらにテレビ会議システムを整備し、国立がんセンターを中心としたがん診療施設情報ネットワークへ参加するなど、その機能の一層の充実に努めることとしております。
 県といたしましては、今後とも、県立中央病院ががん診療の拠点病院として、そのセンター的機能を十分発揮できるよう取り組んでまいります。

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